キャリア転職の専門情報サイト「type」「女の転職type」を運営するキャリアデザインセンター。営業部門のKPI設計やCRMの自社開発、研修やプロダクトの営業企画など幅広い業務を担う営業戦略室で、HubSpotを活用したインバウンドマーケティングの取り組みを統括する畑 幸歩氏(以下、畑氏)は、導入の経緯を以下のように語ります。
(左から畑 幸歩 氏、谷川 未来 氏、紅谷 舞 氏)
「特に課題だったのは、見込み客(求人媒体に掲載いただく企業)の新規獲得です。HubSpot導入前は、とにかくリストに電話をかけ続けるアウトバウンド営業が100%で、ウェブサイトに問い合わせフォームを設置してはいるものの、戦略的な活用はされていない状態でした。また企業の採用担当者のために、弊社が長年培ってきたノウハウや手法をきちんと伝える手段が欲しいという思いもありました。そこで2019年にマーケティングチームを新設し、メールやウェブコンテンツを活用して、見込み客を引きつけ、そこから関係を構築していくインバウンドマーケティングに取り組むこととなりました」
最初に実施したのは、インバウンドマーケティングの意義を営業部門の幹部、マネージャー、現場担当者それぞれに丁寧に伝えることだったと言います。
「実際にお客様の対応を行うのは営業担当者です。マーケティングチームの活動だけで完結するものではないので、同じ方向を向いて協力し合えるよう、最初にきちんと理解を深めてもらう必要があると考えました。営業部門との月に1回の意見交換会は継続して実施しています」(畑氏)
そして現場で主に業務を推進するのが谷川 未来氏(以下、谷川氏)と紅谷 舞氏(以下、紅谷氏)です。
「私は自社ブログやホワイトペーパー、LPなどコンテンツ全般の方針を決定し、HubSpotを使ってコンテンツ作成やメール配信など日々のマーケティング業務を行っています。最近は、コンテンツの作成方針を決定するためのデータ分析にも力を入れています」(谷川氏)
「ウェブコンテンツの企画やブログ記事の作成の他に、2020年8月からは採用担当者向けのセミナーの企画・運営をメインで担当しています」(紅谷氏)
インバウンドマーケティングを実践していくためのツールとしてHubSpotを選んだ理由はなんだったのでしょうか。選定の決め手について伺いました。
「理由はふたつあります。ひとつは私たちのような初心者でも使いやすく、かつ機能が充実している点です。HubSpotはUIがわかりやすく、ブログやLP、メールなど業務上で取り扱うコンテンツの作成はどれも簡単に進めることができました。しかも自動化機能が豊富に盛り込まれています。私たちは長期的に使えるシステムを考えていたため、段階を踏んでやりたいことに取り組めるHubSpotの拡張性は大きな魅力でした。
もうひとつは、CRMを基盤としているため営業部門との間で顧客情報やステータスの共有が簡単である点です。お客様にとって有益な情報を揃え、最適な提案をするために、部門間連携を促進できると感じたのが決め手でしたね」(畑氏)
運用を軌道に乗せるまでには、HubSpotの導入支援担当者によるサポートの存在が大きかったようです。
「導入時は隔週でミーティングを開き、システムの使い方だけでなくマーケティングの考え方についても丁寧に教えてくださって感謝しています。一緒に作ったペルソナやカスタマージャーニーをベースにブログ記事やホワイトペーパーなどのコンテンツを拡充していきました。目指したのは人事・採用担当者にとって有益な情報が自社ブログ内に揃う状態です。
日々の細かい疑問も、HubSpotのヘルプから問い合わせればカスタマーサポートチームの方が迅速に対応してくれるので、フル活用させていただいています。HubSpotを選んで良かったと思います」(谷川氏)
その後は、谷川氏、紅谷氏もそれぞれ自主的に勉強して効果測定を行いながらSEOを意識した施策運用を続けていると言います。また、HubSpotを活用する場面も段階的に増えてきているとのこと。
「採用担当者向けのセミナーを月に1、2回実施していますが、集客のためのセミナーページの作成やメール配信、参加者リストの管理からアフターフォローメールまで、すべてHubSpotで行っています。2020年秋にはSEOを意識してTwitterの公式アカウントを開設し、スコアリングの導入も始めました。顧客の行動やハードデータに対し、求人ニーズの有無や弊社のコアターゲットの条件などをふまえてスコアをつけ、一定以上のスコアに達したものを見込み客(リード)として営業へ引き渡すようにしています」(紅谷氏)
新規見込み客獲得のために始めたインバウンドマーケティング。HubSpotを導入することで実際にどのような効果があったのでしょうか。畑氏に定量的な成果を伺いました。
「インバウンドマーケティング開始前と比べるとフォームからの問い合わせ数は圧倒的に増えました。直近の6月は前年比3倍、「type」に関しては特に好調で5.5倍という結果が出ています。問い合わせページの閲覧数も3倍になり、資料のダウンロード数やセミナー参加企業数も右肩上がりの状態です。また、SQLとして営業に対応を引き継いだ後にもはっきりと効果が見られ、アポイント獲得率はテレアポの10倍、成約率も1.8倍と営業活動の効率化に貢献しています」(畑氏)
また、マーケティング活動の開始によって営業担当者だけではなく「会社」と顧客との間のコミュニケーションの場面が生まれました。これは定性的な面でも良い効果をもたらしているといいます。
「コンテンツを通して顧客行動が可視化されたことで、自然と顧客視点を意識した営業活動ができるようになっています。電話ひとつとってもお客様の状況に合わせた的確なアプローチができるため、営業担当者からも好評です。インバウンドで獲得した見込み客の対応を行う選出メンバーになりたいという声が現場で上がっています」(谷川氏)
HubSpotの導入に始まったインバウンドマーケティング活動は今後どのように展開していくのでしょうか。谷川氏は重視したいポイントとして「見込み客の醸成」と「顧客視点」のふたつを挙げました。
「最初の課題であった新規見込み客獲得については一定の道筋を作ることができました。次はHubSpotのワークフロー機能を使い、見込み客を醸成する施策にも注力したいと考えています。これまでの活動で、欲しいタイミングで必要なコンテンツを提供する顧客視点の大切さを学びました。今後もお客様の満足度を高め信頼関係を構築できるよう、営業と力をあわせて頑張っていきたいです」(谷川氏)
「ウェブサイトへの流入をさらに強化するため、一つひとつのコンテンツのクオリティを高めるアクションを続けていきます。具体的にはHubSpotのSEOアドバイスツールを参考にして記事をブラッシュアップしたり、自社独自のノウハウを生かしたコンテンツを制作することなどを考えています」(紅谷氏)
すでに成功プロジェクトとして社内でもたびたび表彰されるなど、経営層からも大いに期待され「問い合わせ数を今の2倍に」という声がかかっているのだそう。「目標達成を最低限のミッションとして、チーム一丸となって新しい施策の検討・実施を行っていきます」(畑氏)