2005年に創業し、現在は東京の渋谷に本社を置く株式会社コンベックス(以下、コンベックス)は、全国の中小企業を対象に、コールセンター向けのシステムを提供するかたわら、営業支援やセミナーなども行ってきました。
コンベックスのリスティング広告とダイレクトメール、テレアポによる営業活動は、効果はあるものの、近年はリスティング広告費が高騰し、費用対効果が薄れる一方、ダイレクトメールも集客効果はあるものの、”伸びしろ”という意味では疑問がありました。そのため、コストが増加を抑えるため、新規顧客の獲得方法を根本から考え直す必要がありました。
コンベックスの代表取締役の美里泰正氏は、HubSpotを導入する前の状況について、以下のように語ります。
「新規顧客の開拓は、リスティング広告と、ダイレクトメールのメール配信ソフト、そこからのテレアポに頼った状態でしたね。”アウトバウンド”です。しかし、どうしてもユーザーコールの幅が狭く、期待したほど新規顧客数は伸びず、リスティング広告とダイレクトメールの限界を感じていました。
一方で、当社では2011年から『電話営業力強化のための「5つの公式」』(以下、「5つの公式」)という小冊子を発行しておりまして、その小冊子では、当社が電話営業を支援してきた900社あまりの事例をもとに体系化した5つの公式とも言えるポイントを解説しています。これを読んでいただいたお客様からは、もっと深く知りたいとセミナーを申し込んでいただけることも多かったのです」
コンベックスが「5つの公式」の小冊子を作った目的は、「5つの公式」の小冊子を読んでもらうことにより、コンベックスに興味を持ってもらい、コンベックスが提供する営業支援やセミナーの価値を知ってもらうためです。
偶然にも、この小冊子を行なった集客方法をインバウンドマーケティングの概念に出会う前から行なっていた美里氏は、HubSpotのインバウンドマーケティングという概念の導入を直感的に決定することとなりました。
「5つの公式」の小冊子さえ読んでもらえれば、無料セミナーにしてくれる顧客はたくさんいると考えたコンベックスが、自社のHPに「5つの公式」の小冊子をアップロードしたところ、「5つの公式」の小冊子を読んだ方からの問い合わせが多く、クローズ率も高いことに、コンベックスは手ごたえを感じます。
しかし、ホームページを訪れてくれるユーザーが圧倒的に少なく、アクセス数自体が伸びないため、大きな収益改善にはなかなかつながりません。さらにリスティング広告に費用をかけてアクセス数を増やすか、それとも何か抜本的な対策を打つべきか、コンベックスは悩みます。
小冊子をダウンロードさえしてもらえればクローズにつながるのですが、アクセスを増やすためのリスティング広告の費用は月に80万円にも達している状態でした。
そんなコンベックスの転機は、2013年に訪れました。企業や個人に興味を持ってもらい、小冊子を無料ダウンロードしてもらえるようにするには、どうしたらいいかと悩みながら模索しているときに、インバウンドマーケティングに出会ったのです。
「インバウンドマーケティングやコンテンツマーケティングについて書かれていた本に、アメリカのマーケットの記事が出ていて、インバウンドマーケティングに興味を持ったのです。もしかしたら、これは打開策になるのではないかと、その方面に詳しい知人に何が1番いいのかたずねました。そうしたら、返ってきた答えがHubSpotでした」
当時は全てのマニュアル類が英語で書かれていましたが、HubSpotを導入することに決め、今までの施策にインバウンドマーケティングを取り入れ得る準備を始めます。
最初の1年は、勉強と準備と試行錯誤に明け暮れ、インバウンドマーケティングの概念とHubSpotの基本的な使い方を理解することに勤めた、と美里氏は語ります。
「HubSpotの導入には、外部のコンサルタントを3カ月ほど雇い、協力会社さんに1年ほど応援に入ってもらいましたが、勝手がわからなくて苦労の連続でした。その後、2015年に入り優秀なコンサルタントに出会うことができ、施策を推進することが可能になりました。さらに、HubSpotのエージェンシーを理解した協力会社と共同でサイトをHubSpotのCOS機能を用いて構築を始めました。
スマートCTAやスマートリストはランディングページと連動しますから、HubSpotを理解したコンサルタント、HubSpotを理解したサイト制作者と組むことで、ライフサイクルステージとつながったサイトを構築することができるようになったのです」
HubSpotの基本的な概念を理解したパートナーと組むことにより、概念に基づいたコンテンツを作成できるようになったため、キャンペーンの幅が広がり、徐々に顧客獲得拡大につながっていったコンベックス。
「セミナーは定期的に開いていたので、そことHPが徐々に結びついて行ったのですね。当社の『5つの公式』に興味を持ち、小冊子をダウンロードしてくれたけれど、セミナーの申し込みをしていない方に、営業からプッシュをできるようになったことと、ブログやキャンペーンのご案内をできるようになったことが大きいですね。
そのほかにも、啓蒙コンテンツをHPにアップしたことによって、それまではセミナーの案内を送っても、受講に至らなかった企業からのご来場も増えました」
(見込み客化したウェブ訪問者をセミナーへ誘導するEmail)
HubSpotの導入により、アクセス数が徐々に増加したことと、ブログなのどのコンテンツによる啓蒙により「5つの公式」をダウンロードが増えたこと、さらにはHubSpotと高度な連携をするWistiaを導入し、セミナーのダイジェスト動画を作成しメールで配信するなど、ダウンロードしてくれた見込み客に対するアクションが取れるようになったことの全てで、コンベックスを時代に即した方向へ導くこととなりました。
「HubSpotを使って、アウトバウンドとインバウンドを混ぜ合わせた結果、見込み客数が1.5倍になり、セミナーの集客数が1.7倍になったという結果に表れました。以前はリスティング広告に費用を月に80万円ほどかけていたのですが、現在は費用を減らして月に15、6万円ほどになっています。それでも集客数が増えているというのは、インバウンドマーケティングのすごい成果ですよね」
HubSpotを導入し、本格運用を始めた1年半でコンベックスは、見込み客数を1万3,000人から1万8,000人に増加させ、その一方でリスティング広告費を80万円から15万円にまで削減することができたのです。
今後のコンベックスは、コンテンツをライフサイクルステージに結びつけることが1番と考え、よりきめ細かくその部分を強化したコンテンツを構築していく方針と語る美里氏。今後の具体的な展望を尋ねると、以下の答えが返ってきました。
「現在は、リアルの無料セミナーから有償のシークレットセミナーにシフトし、お客様の業種や業態に合わせたセミナーを開催してしいて、そちらのほうは契約率が高いのですよ。業種や業態ごとにランディングページを用意し、例えば、不動産業界向けのランディングページが用意されていて、そこの見込み客がシークレットセミナーを受講し、そのままクローズに至ります。
そのほかにも社長だけの限定セミナーを開催していて、リアルでも業界や業種に合わせたセミナーを実施し、ランディングページにも録画を載せています。
どこかでイベントを開催するなら、そのイベントのランディングページを作る。そうやって業界や業種に合わせたランディングページを構築し続けることによって、見込み客が増え、さらにはクローズに至る。ここに力を入れて行きたいですね」