導入事例

HubSpot導入事例|イベントレジスト株式会社

作成者: Rodrigo Souto|2022/03/29 6:23:55

【HubSpot導入事例】マーケから営業、ヘルプセンターまでの顧客情報を一元化。一気通貫の体制で得た成果に迫る~イベントレジスト株式会社~

イベントの告知や参加申し込み、事前集金などを簡単・安全に管理することができるオンラインのイベントプラットフォーム「EventRegist(イベントレジスト)」を運営するイベントレジスト株式会社(以下、イベントレジスト)。

 

同社ではインバウンドマーケティングの体制を整えるため、 2014年にHubSpotのMarketing Hubを導入し、マーケティングファネルの間口を拡大することに成功しました。(過去記事:長生き”するコンテンツを制作し、見込み客数が7倍以上へ

ツール提供だけでなく、イベントの企画・運営やデザイン施工、コンテンツ作りなど、イベント主催者の方に寄り添ったサポートができることに強みがある同社では、マーケティングからヘルプセンターまでの顧客情報をHubSpotで一元的に管理することを決定、Sales HubとService Hubの追加導入に踏み切りました。取り組みの背景にあった課題から、解決のためにHubSpotをどう活用されてきたのかを伺いました。

システムの分断が阻んでいた、既存顧客との継続的な関係構築

2019年12月、イベントレジストではマーケティングサイトを大幅にリニューアルしています。HTMLが書けなくてもモジュールを組み合わせることで簡単にLPを自作できるようになり、お申し込みまでの導線を改善するなどして、より多くの商談創出を目指してマーケティングサイトを強化しました。商談創出の基盤を整えた上で、いよいよ営業プロセスの課題に向き合うことになったと、同社でマーケティングを担当する岸田 真由子氏は振り返ります。

 

「当時の営業活動はかなり属人的であり、マーケティングチームへの連携も不十分でした。HubSpotのお問い合わせフォームに『現在予定されているイベント概要』を記入する欄があり、そこに記入された情報から案件の温度感や開催規模を判断して営業をアサインするという流れです。

 

当時の営業側では、見積もり機能がついた他社製の営業管理ツールと、それとは別の請求書発行ツールを導入しており、マーケティング側のHubSpotと案件の状況がトレースされていませんでした。結果、『あの案件、どうなってますか?』という確認が頻発し、どのツールの数字が正確なものであるか分からないことが課題だったのです」(岸田氏)

 

”イベント”という商材の特性上、お問い合わせから入金までのリードタイムは長くなりがちです。イベントの開催日直前に要件が追加になることも珍しくないため、正確な請求金額はイベント終了まで担当営業しか把握できておらず、また請求書発行を別のツールで行っていたため、最終的な金額が営業管理ツールに反映されないというのも課題の背景にあったようです。

 

こうしたマーケティングと営業の分断は、既存顧客への継続したアプローチができていないという事業レベルの大きな課題にも繋がっていました。

 

「マーケティングを強化したおかげで、新規顧客から継続的にお問い合わせが入るようになった一方、ちゃんと情報とタイミングを追いかけていれば受注できたはずの既存顧客の案件が多数あったのです。

 

一度お取り組みさせていただいた案件であれば、イベントの規模や開催の目的を事前に推測でき、よりよいイベント企画のご提案もできます。ツールを介してお客様とウェットに繋がっている状態を目指すことにしました」(岸田氏)

 

顧客満足度の向上が、将来の新規顧客の獲得につながる

既存顧客へのアプローチ強化とほぼ同時に、顧客満足度の向上を目的にヘルプセンターの拡充に取り組むことにしました。“イベント”という商材において、参加者の満足度はより重要なファクターであると岸田氏は話します。

 

「特にビジネスイベントでは、参加者がのちにイベント主催者になることが多々あるため、満足度の向上は新規顧客を獲得するという観点からも重要なのです。実際にお問い合わせフォームでは、問い合わせの理由に『以前に参加したイベントで使ったことがあるから』という回答がいくつも寄せられました」(岸田氏)

 

それまで同社のヘルプセンターでは他社製のツールを使い、限られた人数のメンバーで、問い合わせベースで対応していたといいます。体制拡充にあたり、複数名で情報を共有し組織的に対応するため、ツールの見直しは不可欠でした。

 

加えて、より満足度の高いカスタマーサポートのためには、そのお客様の情報をできるだけ多く、事前に把握できることが重要です。

 

「ヘルプセンター業務では、お問い合わせされた方がどのイベントに参加しており、何に困っているのかを把握することに時間が掛かってしまいます。お問い合わせの背景を事前に知ることができれば、電話で直接対応せずとも『よくあるご質問』をご案内するだけで解決できることもあります。

 

以前に導入していたツールでは、『どのイベントに参加しているか』『問い合わせ前にどのページを閲覧していたか』といったお客様の事前情報を充分に得ることができないことが課題でした」(岸田氏)

 

事業成長に柔軟なメンテナンス性を重視し、顧客情報の一元管理とツール統一を決定

2020年2月より、営業とヘルプセンター、両方のプロセスにおける課題を解決するためにツールの導入を検討し始めました。他社ツールや既存ツールのプラン変更も検討したものの、すでにHubSpotのMarketing Hubを長年利用してきたこともあり、HubSpot CRMに情報を集約すべきとの結論に至ったそうです。

 

「少人数の弊社では、全体数字や業務基盤を数名で管理しているため、各プロセスでバラバラのツールを導入するよりも、ツールを統一することのメリットが大きかったのです。一箇所に顧客情報が集約されている状態で、新たなツールに慣れる必要もありません」(岸田氏)

 

同社では、以前から導入していた営業管理ツールから、HubSpotのSales Hubと見積書・請求書作成ツール「board」への乗り換えを実施しました。Sales Hubにも見積書や請求書を作成する機能はあるものの、企画・運営・施工なども含むイベントの見積もりでは、項目が複雑で、補足事項や、再提出の頻度も多いため、Sales Hubの機能ではマッチせず、営業管理+見積書・請求書作成がセットになった「board」を選択されたそうです。

 

一方のヘルプセンター業務では、以前使われていたカスタマーサービスソフトウェアからService Hubへの乗り換えが、2020年4月より実施されました。ツールの移行において重要なポイントが「メンテナンス性」だったと、岸田氏は語ります。

 

「かっこいいツールをあちこちで導入しても、全体で統制がとれなければ意味がありません。データを更新し、事業方針に合わせて各種設定を変更、それが自動反映されるといったメンテナンスのところまで考えると、ツールは集約されているべきだと思います」(岸田氏)

 

HubSpotへ一本化するにあたって、「この体制のままでは業務が回らないかもしれない」といった危機感がすでに共有されていたため、社内の合意形成はスムーズに進んだといいます。おりしも新型コロナウイルスの感染拡大で、リモートワークが推奨されるようになったことを契機に、Sales HubとService Hubの導入が加速していくことになります。

 

コロナ禍で急増した問い合わせにもスムーズに適応。社内に浸透させた工夫とは

新型コロナウイルスの感染拡大の影響は大きく、イベントレジストでは一時期イベントの相談は激減。しかしその翌月には、オンラインイベントの開催が急増し、瞬間最大風速ではこれまでの倍の問い合わせ件数があったと言います。

 

同社ではリモートワーク体制下で効率的に移行作業を進め、過去ツールからSales Hub Service Hubへの移行はおよそ5ヶ月間で完了。

 

自宅での作業では、データ移行の全体設計や、ロゴや画像といった4、5年分の古い情報の更新、また英語記事の整理などを社内で手分けして進めました。これらの作業を進めた結果、コロナ禍の繁忙期に円滑な問い合わせ対応ができるような環境が整えられたのです。

 

「Sales Hub内では、問い合わせから受注までを細かく段階分けし、ワークフロー機能で登録条件を設定しました。大まかな流れとして、問い合わせが入ったら『商談』のステータスに引き上げます。それと同時に取引情報が作成されます。

 

その後、温度感が高いリードや、アポイントが取れた場合は、『商談予約済(実のある問い合わせ)』の段階に引き上げます。打ち合わせ後、見積もり提出の機会を得られたら、『見積希望※board送信』のフェーズに移行。この際、Webhookで見積書・請求書作成ツールに顧客名、担当者名、案件名などの取引の情報を連携します。また、最終的に受注が確定したり、失注した場合には、その情報をWebhookを通じてHubSpotの取引に返す仕組みです。このWebhook機能のためにエンタープライズプランへ変更したほど重要な要素で、狙い通りの挙動になって満足しています」(岸田氏)

 

Sales Hubを社内に浸透させるため、ワークフローの設定で各段階の名称を営業が分かりやすいフレーズにするという細かい工夫がなされています。デフォルトのままでなく、自社文化に合わせて「商談予約済(実のある問い合わせ)」「見積希望※board送信」「受注確定※board受領」「イベント終了」に設定したことで、ツールに慣れない社員でも分かりやすくなり、設定ミスも減りました。

 

また、若手社員から、新しいステータスの提案やインバウンドからの案件だけでなく、既存顧客からの案件も取引で管理したいとの要望がでたことも、ツールの浸透を実感した嬉しい出来事だったそうです。その要望をきっかけに、既存顧客をコンタクトに取り込むことで、すべての顧客情報がHubSpotコンタクトに収まりました。

 

イベントを扱う同社ならではの変わったSales HubとService Hubの活用方法

同社では他社とは違う、少し変わったSales HubとService Hubの活用をしているそうです。続けて岸田氏に、それぞれお話を伺いました。

 

「コンタクトに紐付ける『取引』というオブジェクトをどう活用するのが最も使い勝手が良いのかと考えた時に、弊社では開催予定のイベントを『取引』の情報で管理することにしました。イベントの問い合わせから、イベントの終了までの情報を『取引』に集約しています。

 

弊社の料金プランには、必要最低限のイベントを開催できる無料のBasicプランがあります。そのため今は売り上げには直結しないけれども、今後有料プランを活用いただく可能性があるという無料プランの顧客も管理したかったのです。また、複数のイベントを同時に開催しているイベント代理店さんの場合、同じアカウントで複数のイベントを紐付けることができるので重宝しています。

 

もう1つ似たような事例として、Service Hubの『チケット』を、弊社サービスの有料プレミアムアカウントの管理に応用しています。お客様からの問い合わせ時に発行される『チケット』に別のパイプラインを用意し、有料プレミアムアカウントのお申し込みがあった際に区別される仕組みです。

 

以前はスプレッドシートで管理されていたのですが、顧客情報のアップデートが自動化できず、ダウングレードされてもデータ上はそのままになっていたケースもありました。これによって、プレミアムアカウントの利用期限に近づいたタイミングで、契約継続を促すアプローチを仕組み化することができています。

 

顧客体験に関わるプロセス管理を一元化した結果、各部門に恩恵が

今回の取り組みでSales HubとService Hubの導入が完了し、すでに活用していたMarketing Hubと合わせて顧客体験に関わるプロセスの管理をHubSpotに統一しました。 マーケティング、営業、ヘルプセンターの顧客情報を統一した同社ではどのような変化があったのでしょうか。

 

「まだ仕組みを整えたばかりのため、明確な数字の成果は、算出していません。しかし、個別の事例ごとに変化がでてきたと感じています。

 

以前の体制であれば、ヘルプセンターへの問い合わせはヘルプセンター内でのみで完結しており、問題が解決されて終わりでした。しかしService Hubを導入し、HubSpot内で顧客情報を一元管理できるようになったことで、参加者情報をマーケティングコンタクトにプールできるようになりました。

 

参加者からイベントの問い合わせが発生することは珍しくありません。顧客情報を残しておくことで、以前どのようなイベントに参加していたのかを把握し、一歩踏み込んだご提案ができるようになっています」(岸田氏)

 

営業会議の準備に掛かっていた時間が短縮。自走するヘルプセンターカスタマーへの変化も

2020年2月のSales HubとService Hubの導入からおよそ2年近くが経ち、現在どのような成果が得られたのでしょうか。定量的な計測が難しい部分もある中で、業務の効率化やお客様対応時間の削減といった成果が得られたそうです。

 

「Sales Hubの導入で、営業会議の準備に掛かっていた手間を大幅に削減できています。以前は営業一人ひとりにイベントの開催状況を聞いて回っていた作業が、取引の状況を確認すれば済むようになりました。営業の意識も変わり、顧客のコンタクト情報を積極的に入力してくれています。結果、事業計画の予測を立てやすくなっていますね。

 

Service Hubを導入したヘルプセンターでは、お問い合わせした参加者がどの記事を読んでいるのか、どのイベントに参加しているかを事前に把握した上でフォローできるようになったことで、お困りごとの解決方法をスムーズにご案内できるようになっています。

 

また、どのようなキーワードで問い合わせが発生しているかを分析し、ヘルプセンター記事のタグ付けを現場自ら判断して自走できるようになったことも成果だと感じています」(岸田氏)

 

「パートナー」のような存在から、ビジネスを支える「インフラ」へ

「システム全体を俯瞰してみると、顧客情報を集約することには大きなメリットがあると思います。弊社はまだ中小企業の規模ですが、例えば会社が大きく成長していった場合でも、HubSpotの機能を上手く活用していくことで長期的に活用することができるのではないでしょうか。

 

前回の記事では、HubSpotを『パートナー』のような存在と表現しましたが、今回の取り組みでは業務を支える重要な『インフラ』としての役割を果たしてくれました。我々のビジネスを支えてくれる基盤であり、必要な武器を提供してくれます。

 

また、HubSpot自体も成長しているため、使う側の力量も試されます。全体の方針を考え、しっかり使い倒す気があれば、これ以上、頼りになるツールはありません」(岸田氏)

 

【お知らせ】 2021年11月にHubSpotと、EventRegistを連携させるWebアプリケーション『EventRegist for HubSpot(無料版)』をリリースしました。 HubSpotアプリマーケットプレイスからアプリをインストールし、EventRegistのアカウントを指定の上、データ連携を許可すると、EventRegistを利用して開催したイベントの各種データから基本的な項目を取込み、マーケティングイベントやコンタクトの作成・更新を自動で行うことができます。