株式会社構造計画研究所は、1956年に創業したエンジニアコンサルティングの会社です。構造設計関係の事業を行う企業としてスタートし、熊本城天守閣や日本万国博覧会のパビリオン、六本木ヒルズ森タワーなど、時代を象徴するような大型建築物の設計を手がけてきました。
構造計画研究所で、すまいIoT推進部でRemoteLOCKエバンジェリストを務める池田 修一氏(以下、池田氏)は、HubSpot導入の背景を以下のように語ります。
「構造計画研究所は、建築物の構造設計の会社として開業し、1960年頃からは、IBMのスーパーコンピューターを取り入れ、システム開発事業に乗り出しました。現在では、その構造設計業務は、弊社のビジネス全体の20%程度となりシステム開発やコンサルティングビジネスの割合が多くなっています。
そのような背景から、IoT(モノとインターネットを繋げることで互いに制御し合うシステム)技術を、もともとの弊社の事業である、住まいや建物、自然環境や社会コミュニティの分野に活用し『安全・安心な空間づくり』の提供を目標に“すまいIoT推進部”を新設しました。RemoteLOCKは、新しい入室管理の仕組みであると同時に、データ収集のためのデバイスとしても活用も期待され事業が開始されました。
販売以降、訪日旅行客の宿泊需要に伴い“民泊“市場での利用は堅調に伸びているとのことです。
「RemoteLOCK」とは、鍵もスマートフォンを使わずに、暗証番号とテンキーを利用することで施錠・開錠ができる製品。Wi-Fiなどを活用し、ユーザーの利用状況をクラウド管理することが可能です。オフィスはもちろん、民泊・宿泊施設、レンタルスペース、シェアハウスなどで使用されています。開発国のアメリカでは、26,000台以上の導入実績があります。
(左:池田 修一氏 右:塚本 遼太氏)
構造計画研究所は、もともと構造設計やシステム開発、コンサル業務などを主とし「技術」で対価を得てきた会社です。RemoteLOCKのようなハード製品の取り扱いは初めてとあって、販売対象となる顧客データがほとんどない状態でした。
それまで同社では、展示会への出展やセミナーの開催・学会での活動、雑誌・新聞等の広告などの方法で集客を実施。実際、BtoBの事業においては、充分な結果が出せていました。
「“モノを売るビジネスとはどのようなものなのか”というところから始めました。弊社の事業は多岐にわたっているので一概には言えませんが、数百万円以上からの仕事が多く、最安値のパッケージ販売ツールでも20万円ほど。ほとんどがBtoBの事業ですから、営業やマーケティング担当者が客先でプレゼンを行い、仕事を受注しています。
RemoteLOCK(販売価格1台3.5万円~)の事業は、既存ビジネスとはまったくの別物だという認識でした。そのため、より効率よく販売を行う必要があり、オンラインでクローズ(契約成立)の間近まで持っていきたいと考えました。」
今までとは全く異なる社内リソースの配分を考え、ウェブサイトの活用をしなくてはいけなかった池田氏と塚本氏。その際に、マーケティング活動を効率的に行うツールだけではなく、獲得した見込み客情報をどのように管理し、案件進捗の管理を行うか、そのような包括的なツールが必要になったとのことです。
ウェブサイト経由でリードを収集し始めたものの、うまく活用できていないという状況の中、池田氏たちは、マーケティングオートメーション(マーケティング活動において、定型的な業務を自動化するため)のツール探しを始めました。
構造計画研究所では、以前から他社のセミナー管理ツールなどを利用していたという経緯があり、そのツールに連携させられる別企業のCRM(顧客管理ソリューション)の導入を検討していました。そんなとき、HubSpotの紹介を受けたのです。
「HubSpotと他社ツールを比較検討した結果、HubSpotに軍配があがりました。HubSpotは、顧客管理とマーケティングオートメーション、両方の機能が備わっており、他社では難しい統合的な管理ができます。さらに、技能レベルでのカスタマイズ性があるところも魅力的。HubSpotのマーケティング手法には、科学的な裏づけがあるところも良いと思いました。」
さらに、アドバンテージを感じたのは、HubSpotの代理店・株式会社24-7(以下、24-7)による導入コンサルティングだったそうです。
「マーケティングオートメーションの運用は自社内で行うことを決めていました。しかし、どのような設計・運用にするかイメージができてない状態だったので、考え方からご支援頂きました。24-7さんが、ツールの使い方や初期段階で制作すべきコンテンツの内容や運用方法、期待値等を具体的にアドバイスしてくれたので、HubSpotの導入はスムーズにいきましたね。」
ウェブサイトの運用は、“すまいIoT推進部”全員で担当。手際良く新規の見込み客を集めるために、まずはブログやランディングページを制作し、ウェブ訪問者が、資料や見積もりを請求できる仕掛けを作りました。
(構造計画研究所のダウンロードコンテンツの一つ)
また、構造計画研究所のマーケティングで特筆する点は、塚本氏や池田氏自身が、HubSpotの無料CRMとセールスツールを活用し、自ら獲得した見込み客を成約直前まで誘導する、または場合によっては自ら成約してしまう点です。
(RemoteLockの販売進捗管理を行うHubSpot CRMの取引画面)
「HubSpotのツールは、CRMやセールスツール(SFA)が統一されており、どの見込み客がどのような興味を持っているかが非常にわかりやすいです。また、どの見込み客がどの商談フェーズにあるかが一目瞭然。ドラッグ&ドロップで案件管理を瞬時に行うことができる。そのため、自分たちで受注するまで結びつけることも行なっています」
HubSpotの運用は、おもに塚本氏が担当することに。RemoteLOCKの事業を牽引する社長からマーケティングオートメーションへの理解はあったそうですが、法人営業で成果を上げてきた同社とあって、ウェブマーケティングからの顧客開拓には懐疑的なところもあったそうです。
「リスティング広告やその他ウェブ上の広告に関しては、実際に試行錯誤を繰り返しながら効果を計測。オフラインのマーケティング活動とも比較しながら、徐々にウェブマーケティングにかけるリソースの比重があがってきました。
また、従来事業での案件管理は、Excelベースで行ってきましたが、HubSpotなら、費用対効果の数字がすぐに分かります。HubSpotで集めたデータは方針検討に利用し、社内への説明にも使いやすかったですね。」
(HubSpotのMarketingダッシュボード)
とはいえ最初は、ウェブ上に準備するコンテンツ等もどのようなものを作れば良いのか分からず、苦労したそうです。
「特にブログには、当初何を書いて良いのか分からなくて。なかなか、次のステップにつながるようなものが出てきませんでした。しかし、私たちの“すまいIoT推進部”は、小さなチームなので、集客から販売までのすべてのプロセスが見えています。
それを強みとして、社内のセールスやサポート担当者からカスタマーによく質問される事項などを集めて情報をまとめていきました。」
まずは販売までのプロセスで必要な中心のコンテンツを作り、徐々にほかの商品との差別化要素の説明など補完する記事などを作成していったそうです。
「HubSpotの使用を始めてから、1年間で月のCVは10倍以上に。手探りで始めたウェブマーケティングに、大きな手応えを感じています。今後は、ナーチャリング(資料請求などをしてくれた顧客を購入客へ育成すること)に力を入れていきたいですね。HubSpotを活用して、マーケティングのオートメーション化を促進していくことを考えています。」
(左からすまいIoT推進部:池田 修一氏、佐藤 貴大氏、塚本 遼太氏)