1998年創業、2004年より、ビジュアルコミュニケーションサービスの企画・開発・販売・保守を通じて企業の「働き方改革」を支援してきた株式会社ブイキューブ(以下、ブイキューブ)。2015年の11月より従来のマーケター志向のマーケティングではなく、顧客志向のマーケティングへと大きく方針を変更することになります。
同年11月にブイキューブへ入社し、2016年4月にマーケティング本部長へと就任した佐藤岳氏(以下、佐藤氏)は、その経緯を以下の様に説明します。
「私が就任する以前の当社のマーケティングは、セミナー、展示会、SEO、SEMなどの施策を手広く行い、見込み客は獲得していました。一方で、どの施策がどれだけの商談の発生や売上へ貢献しているか全くわからない状態でした。よって、幅広く様々な施策を行なっているものの、営業部門が受け入れ、商談へ転換するリードの発生源はインバウンド、すなわち “問い合わせ”のみでした。
さらに、就任する前にコーポレートサイトをリニューアルしたもののサイト運用に課題があり、一番の見込み客獲得の創出源となっていた“問い合わせ”へのコンバージョン数が低下し、マーケティング本部の年間目標の達成に影響を及ぼしていました。」
その際に、佐藤氏は大きな課題のひとつとして、様々な施策がどの程度の商談の発生や受注に貢献できているかが定量的に可視化され測定できていないことだった、と述べています。加えて、展示会やイベントで獲得した膨大な見込み客に至っては、リードの獲得から次のアクションを実施するまでに1ヶ月半もの時間を要していました。
また、リードの確度を定量的、定性的に評価する仕組みが機能しておらず確度の高い見込み客を明確にできず誰もフォローしないという状態でした。故に、経営層や営業部門からは投資効果が全くわからない、という課題を指摘され続けている状態でした。佐藤氏は、当時の数値の状況を次のように語ります。
「マーケティング会社の伴走支援サービスを利用し、リードスコアリング、カスタマージャーマップ設計、コンテンツ制作、等へそれなりに投資を行っていました。
しかし、当時の担当者自身が当事者意識を持って対応していなかったため、確度を評価するシステムが稼働しカスタマージャーニーに基づくコンテンツを展開してもインサイドセールスチームが受け入れられる有効なリードを明確にできませんでした。
結局、インサイドセールスチームは、ウェブからの問い合わせに対してのみ電話をしている状態で、展示会で獲得した見込み客が営業担当者に振られる率は、ウェブが10%を超えているのに対して、1%を少し超えるくらいという惨憺たる状態でした」
その当時の社内の雰囲気としては、マーケティングは予算をつかっているものの明確な効果を出しておらず、その施策の有効性や有用性について厳しく評価されていると佐藤氏は感じていたと言います。
また、佐藤氏が入社した当時のブイキューブは、Web会議市場の実績から低コストで使い勝手の良いテレビ会議システムをローンチしましたが、戦略的なマーケティング施策の実行に課題がありました、佐藤氏は説明します。
そこで、佐藤氏はテレビ会議システムの企画から販売に関わるメンバーを集め、システムの導入検討に携わるペルソナとカスタマージャーニーに基づいた情報ニーズの整理を行いました。また、マーケティング施策が商談の醸成や受注へどの程度貢献しているのか可視化するために、マーケティングプロセスとKPIを刷新しました。
2016年の1月にブイキューブは、マーケティングオートメーション機能をもつプラットフォームの導入検討を開始します。導入にあたり定量的に獲得目標などが確認できるもの、かつ社内のマーケターが本当に使いたいのか、使えるのか、という視点で精査を始めます。
「以前は、マーケティング会社が推していた国産のプラットフォームを用いていたのですが、ペルソナやカスタマージャーニーに基づいた施策を実行する場合、設定がかなり煩雑でした。
また、KPIを把握できておらず、施策別の効果を把握できませんでした。そこで、新しく選定するフラットフォームでは、見込み客のカスタマージャーニーに沿った管理が行えることも重要視しました。
BtoBで製品やサービスの導入を検討される方は、自身の課題を解決する製品やサービス、ソリューションに関する情報を自ら収集し、比較検討した上で問い合わせする。購買のプロセスの60%(※)を自ら行っている、と言われています。
そのようなお客様の購買行動に沿った施策が必要という意味ですから、新しいプラットフォームは、必然的にWebコンテンツ管理、ブログ運用、入力フォームや、メール配信、ウェブのアクセス履歴、リードスコアリング、オートメーション機能、外部連携などの機能を一元的に運用管理できることがとても重要になります。」
(※出典:Tom Martin著、 The Invisible Sale: How to Build a Digitally Powered Marketing and Sales System to Better Prospect, Qualify and Close Leads)
佐藤氏が述べるもう一つの点が、その当時行っていた施策も問題なく行えるツールであるかどうか、という点でした。その当時は、社内にコンタクト数が約5万件で月にメールを20件、ウェブの入力フォームが11個存在し、今後1年間で50のフォーム作成を予定しており、それらが問題なく実行できるプラットフォームであることも必須条件でした。
また、高度なテクニカルなサポートを必要とせずに、マーケター自身が気軽に利用でき、メール1つの作成に数時間費やさずに、コンテンツのパターンわけも容易にできるなど、優れたユーザーインターフェースであることが必須でした。
それぞれのツールを提供している企業のプレゼンテーションを通じて、機能と費用の評価を数値として比較し、どのツールが好ましいかを精査して選定を行いました、と佐藤氏は説明します。
そこで、佐藤氏が強調したのが、
「マーケティングのプラットフォームは、実際に運用する人が直感的に活用できるのか、触りたくなるのか、ということの重きを置いて選定することが重要です。そのため、先程の機能比較、見積比較だけではなく、ユーザビリティの比較も実際に社内のメンバーにしてもらいました。
結果として選定に関わった関わったメンバー7人のうち6人がHubSpotへ満点の評価を与え、特にインターフェースのシンプルさ、コンテンツの作成のしやすさなどで客観的にも圧倒的な評価でした。そのためHubSpotの導入を行うことになりました」
HubSpotの導入後、佐藤氏たちが最初に取り組んだのは、ブログを立ち上げ、導入検討されている方へ役立つ情報を発信し、興味を持った見込み客を獲得する仕組みを構築することでした。導入から12ヶ月経過した時点で、ダウンロードできるコンテンツは43つほど設置され、コンテンツをダウンロードした見込み客や、“問い合わせ”を対して特定のスコアを与えて、インサイドセールスが電話をかけやすい仕組みもの運用も開始し始めています。
社内勉強会なども欠かさずに行っており、実際にインバウンドで見込み客化し“問い合わせ”をしてきた人のウェブ履歴(タイムライン)をHubSpotで確認。該当のお客様がどのようなニーズを持ってどのような情報を探し、当社はそのニーズに応えられていたのかどうか、などの検証を継続的に実施している、と佐藤氏は強調しています。
「見込客の閲覧行動や属性に応じたパーソナライズな情報提供をWebサイト上で木目細かく行う機能の実装を予定しています。また、昨今、ニーズが高まっている働き方改革の導入や実践に役立つ情報提供を強化して行きたいと考えています。」
ここまでマーケティングに関わる活動と、営業との連携を大きく改善したブイキューブ。海外拠点からマーケティング改善に向けた支援の要望も高まっています。現在の日本語ブログを英語化し始め、インドネシア語化、タイ語化などにもおこない、HubSpotのプラットフォーム上で4言語以上のマーケティングと営業活動を行う計画を立てています。
さらに多言語化が進めば、中国語などの展開も視野に進め、さらにグローバルにビジュアルコミュニケーションを変えるプラットフォーム企業としてビジネスの成長を進めていくことを狙っています。
「現在は、今後の多言語展開のためにシステム設計などを行っています。例えば、ドメイン設定、コンタクトの識別、海外用の入力フォームの設定やワークフロー、非日本語のウェブサイトの作成の設計プロセスをどうすべきかなどです」
加えて、佐藤氏は現在海外のマーケティングチームの教育の指揮もとり、ブライアン・ハリガンの著書のインバウンドマーケティングに関する本や、バイヤーペルソナ、カスタマージャーニーなどの研修を進めています。
「マーケティングと営業チームはお互いに共有の目標を持っているわけですから一つのパイプラインを作って働かないといけません。サッカーに例えて表現するならば、マーケティングはミッドフィルダーで、そのミッドフィルダーからパスを受けたフォワードである営業はゴールを効率的に多く決めないといけませんよね。私たちが会社の成長に責任を持つということも、同じことではないでしょうか」